フィリピン・カリンガ/ 13 min.

フィリピン・カリンガの山々に息づく「本当の贅沢」

コピ(珈琲)の香りと、境界のない縁側

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フィリピン・ルソン島の北部に位置する山岳地帯、カリンガ州。
ここには先住民族カリンガ族が暮らしています。
彼らは、一般的にイメージされる明るく陽気なフィリピン人の性格とは少し異なり、どこかシャイで穏やか。
その控えめな気質は、どこか日本人に似ているようにも感じられます。

昔ながらの木造建築が立ち並ぶ村、美しく広がる田園風景。
そこには「となりのトトロ」の世界を彷彿とさせる、古き良き日本のような空気が流れていました。
一度も訪れたことがないはずなのに、胸が締め付けられるほど懐かしい、不思議な感覚に包まれます。

コーヒーをこよなく愛する彼らは、挨拶代わりに「コピ?(コーヒー飲む?)」と声をかけ合います。
誘われるまま縁側や家の中にお邪魔して、共にコーヒーをいただきながら談笑したり、時には黙って景色を眺めたり。 調理の主役は今も薪(まき)です。日本でいう囲炉裏のような場所で、火を熾(おこ)し、ダイレクトに薪で焼く。 その煙の匂いさえも、この場所の心地よさを形作っていました。

かつての日本にも、これほど豊かで自然的で、互いに助け合いながら、日々の何気ない瞬間を幸せに変えて生きていた時代があったのでしょう。 初めて来た場所なのに、なぜこれほどまでに心が安らぎ、温かい気持ちになるのでしょうか。

何より僕の心を捉えたのは、それぞれの家にある「縁側」でした。 朝、縁側でゆったりとコーヒーを飲みながら、朝日を浴びて黄昏る。
やるべきことはたくさんあっても、彼らは自分を整える時間を何よりも大切にしています。その姿に、僕は深い憧れを覚えずにはいられませんでした。
昼も夕方も、縁側という境界のない場所を介して、人々は溶け合うように時を過ごします。
本当の「贅沢」とは、こうした豊かな時間と空間のためにある言葉なのだと、僕は静かに噛み締めていました。

STORY:  Yuki Kondo (WORLD FESTIVAL Inc.)
Cam + Edtit :  Yuki Kondo (WORLD FESTIVAL Inc.)